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コラム

2026/09/27

間質性肺炎、間質性肺疾患を解説します

間質性肺炎、あるいは間質性肺疾患という病気をご存知でしょうか? 時々目にするようになったこの病気を解説してみたいと思います。

間質性肺炎は一つの病気ではありません。原因や経過が異なる幾つかの疾患を含んだグループの総称です。更に、過敏性肺炎など間質性肺炎によく似た病気も含めた総称として、間質性肺疾患という言葉が最近ではよく使われます。以前は「治療が難しい病気」と考えられていたのですが、現在では新しい治療も増えています。従って、できるだけ早く病気を発見、正しく診断し、適切な治療を見つけることが大切です。

間質性肺炎の病態

肺は酸素を血液中に取り込む「肺胞」という小さな袋が無数連結してできています。この肺胞の壁やその周囲の組織、つまり袋の中以外を肺の「間質」と呼びます。間質性肺炎は、この間質に炎症がおきたり、傷ついた組織が硬く変化する「線維化」が起こることによって生じます。線維化が広がると肺の弾力がなくなり、空気を吸っても十分に膨らまなくなります(肺活量の低下)。そのため、咳が増えたり、運動時に息切れを感じるようになります。

間質性肺炎のうち原因がわからないものを「特発性間質性肺炎」と呼び、関節リウマチなどの膠原病に伴うもの、薬剤によるもの、鳥やカビなどの環境が関係するもの、職業上の粉じんへの曝露が関係するものなど原因があるものを「二次性間質性肺炎」といいます。

したがって、間質性肺疾患が見つかったときには、重症度の評価だけではなく、間質性肺疾患の原因を調べることも大切です。

症状は「動いた時の息切れ」と「乾いた咳」が多い

間質性肺炎の主な症状は、以下のようなものです。

  • 歩いたり階段を上ったりしたときの息切れ
  • 痰をあまり伴わない乾いた咳
  • 以前と同じ運動がつらくなった
  • 他の人に比べて歩く速度が遅くなった

咳以外は加齢や運動不足でも生じる症状です。そのため病気の発見が遅れることがあります。健康診断などの胸部レントゲン写真異常で発見されることも多いです。胸部レントゲン写真の欄に「網状影」の記載があれば、間質性肺炎を考える必要があります。

聴診器を背中に当てると「パリパリ」という特徴的な音(「捻髪音(ねんぱつおん)」)が聞こえます。胸部CT検査で間質性肺炎のような陰影が見つかっても、この「捻髪音」が聞こえない場合は、間質性肺炎ではないこともあります。

「特発性肺線維症(IPF)」かどうかが最初のステップです

特発性間質性肺炎の中で最も頻度が多く【1】、尚且つ簡単に治らない疾患が特発性肺線維症(IPF)です。IPFでは肺の線維化が徐々に進行し、次第に呼吸困難が悪化します。かつては治療法が限られていましたが、現在では肺の線維化の進行を抑える「抗線維化薬」が複数使用できるようになり、治療が進歩しています。「間質性肺炎=特発性肺線維症=治療法なし」、と考えている専門外の医師がまだいるかもしれませんが、=の部分は2つとも間違いです。

IPF以外の間質性肺炎、間質性肺疾患の中には、ステロイドや免疫抑制剤が有効なものもあります。特に関節リウマチなど膠原病が原因である場合には有効です。過敏性肺炎では原因となるカビや羽毛、鳥のフンなどを除去することが最も大切な治療となります。IPFではステロイドと免疫抑制薬による治療がかえって予後を悪化させることが示されています【2】。つまり、間質性肺疾患の種類によって治療方法が大きく異なります。

CTだけではなく多種の検査を組み合わせて診断します

間質性肺炎の診断では胸部CTが非常に重要です。しかし、CTだけですべてを診断できるわけではありません。感染症による肺炎でも間質性肺疾患と同じようなCT所見のことがあります。

これまでの病歴、服用している薬、仕事、生活環境、喫煙歴、鳥との接触、カビへの曝露、関節症状や皮膚症状などを確認します。血液検査では原因となりえる膠原病の検索を行います。病気の重症度評価として呼吸機能検査を行います。そして体に負担をかける検査になるのですが、必要であれば気管支鏡検査によって肺で生じている炎症や線維化を病理学的に調べます。以上を組み合わせてどの病気なのか検討します。

診断が難しい場合には、呼吸器内科医だけでなく、胸部画像を専門とする放射線科医や病理医などが一緒に検討する「集学的検討(MDD)」が行われることもあります。実際、間質性肺疾患は専門医の間でも診断が一致しないことがあり【3】、多方面から検討することが重要とされています。

IPF以外でも進行する場合があります

IPFは徐々に病状が進む疾患ですが、IPF以外の間質性肺疾患であっても、一部の患者さんでは時間とともに肺の線維化が進みます【4】。息切れが強くなる、呼吸機能が低下する、CTで白い陰影や蜂巣肺と呼ばれる小さな穴が連なった部分(線維化)が増える、といった変化がみられる場合です。呼吸機能の低下やCTでの線維化の進行は、病状の悪化と考えられます。標準的な治療を行っていても病状が悪化している場合は、IPF以外の間質性肺疾患であっても「進行性肺線維症(PPF)」と考え、抗線維化薬によって肺機能低下を抑える治療が行われるようになっています【5,6】。

抗線維化薬は高価なお薬です。しかも、抗菌剤のように短期間服用すれば治してしまうお薬ではありません。長期間服用を継続する必要があります。そのため、高額療養費制度の利用や指定難病の医療費助成対象になるのかを評価・検討することも重要です。

そのため、間質性肺炎は「一度診断したらそのまま」ではありません。次に述べる急性増悪以外にも肺がんの合併率が高いため注意が必要です。症状、呼吸機能、血液検査、画像などを定期的に確認し、病気が進行していないか、場合によっては診断に変更がないか、更には治療方針の変更を検討していくことが大切です。

息苦しさが悪化しているときは注意してください

間質性肺疾患は慢性的に経過することが多いです。しかし、それまで安定していた患者さんが数日から数週間のうちに急に病状が悪くなることがあり、これを「急性増悪」と呼びます。具体的には、咳が悪化する、普段なら感じなかった程度の運動で息切れを感じる、酸素濃度モニターの値がいつもより低い、更には安静にしていても息苦しさを感じるようになる、などです。急性増悪は、風邪やインフルエンザなどのウイルス感染や細菌性肺炎などをきっかけに発症することがあります。

急性増悪は早期に適切な対応を行う必要がありますので、

「いつもより急に息苦しい」、「咳が急に増えた」、「酸素の値が下がった」

という変化がみられた場合には、早めの受診が必要です。

専門病院とかかりつけ医で一緒に診ていきます

間質性肺炎の患者数は増加しており【7】、軽症の方も多いため、間質性肺疾患すべての診療を大きな病院だけで行うことは難しくなっています。診断や治療方針の決定は間質性肺疾患を専門とする医療機関で行い、状態が安定している時期には、かかりつけ医で日常的な健康管理を行うという医療連携が望まれています。

クリニックのかかりつけ医は、間質性肺疾患を早く見つけて専門医へ紹介することに加えて、高血圧や糖尿病などの併存疾患の管理、風邪など軽症感染症への対応、急性増悪予防のためのワクチン接種などの役割があります。そして病状変化をしっかり判断し、必要時に速やかに専門医療機関につなぎます。

間質性肺炎は「治療できる病気」

間質性肺炎という名前を聞くと、難病と不安に思われるかもしれません。まずは、正しく診断することが大切です。そして病状を適切に評価し、必要な治療につなげていきます。現在の間質性肺疾患診療の目的は、

炎症があれば制御すること、線維化の進行を遅らせること、呼吸機能を良い状態に保つこと、急性増悪を予防すること、そしてできるだけ普段の生活を維持すること

です。そのために利用できる治療の選択肢は以前より増えています。

「年齢のせいだと思っていたけれど、最近どうも息切れが強くなった」「乾いた咳がなかなか治らない」「健康診断で肺に影があると言われた」。

そんなときは、一度呼吸器内科にご相談ください。

間質性肺疾患は、早く見つけ、正しく診断し、必要な治療につなげていくことが大切な病気です。

執筆者:白木 晶 (2026.9.27) 

引用文献

  1. 厚生科学研究報告 2001:106-108
  2. N Engl J Med 2012;366:1968-1977
  3. Arch Pathol Lab Med. 2016;140:1375-1382
  4. Am J Respir Crit Care Med 2023;207:69-76
  5. N Engl J Med 2019;381:1718-1727
  6. N Engl J Med 2025;392:2203-2214
  7. 厚生労働科学研究「びまん性肺疾患に関する調査研究」令和2〜4年度総合報告書

参考資料

日本呼吸器学会 特発性間質性肺炎の手引2022

難病情報センター 特発性間質性肺炎 https://www.nanbyou.or.jp/entry/156