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コラム
2026/07/26
妊娠と喘息について
妊娠中の女性にとって、お薬の服用は気になることでしょう。今回は、妊娠中の喘息治療について、解説したいと思います。
結論から言いますと、喘息のある妊婦さんには喘息治療の継続をお勧めします。
妊娠すると喘息はどうなるの?
喘息の標準治療であるステロイド吸入療法が現在ほど普及していなかった頃の調査では、喘息がある女性が妊娠した場合、35%は喘息が悪化、28%は改善、33%は変化せず、でした1)。最近の研究では、妊娠中の喘息悪化は、妊娠前・出産後と比べて少ないのですが、妊娠前から喘息コントロールが悪かった群と妊娠後に治療中断した群で、妊娠後に喘息発作で病院を受診する回数が増えていました2)。
喘息発作はやっぱり良くない
気管支喘息発作時には、気管支が細くなり呼吸が苦しくなります。発作が重くなれば、母体の血液中酸素濃度が低下します。赤ちゃんはお母さんの血液から酸素を受け取っていますので、お母さんが喘息発作を起こせば、赤ちゃんや赤ちゃんを守る胎盤に酸素不足を生じて、早産、胎児発育不全、低出生体重児、妊娠高血圧症、帝王切開率の上昇がなどのリスクが増えることが知られています。従って、お母さんが喘息発作を起さないことが最重要になってきます。
喘息のお薬は大丈夫?
喘息治療で最も大切な薬剤は吸入ステロイド薬(ICS)です。吸入薬ですから体内に入る薬剤量も少なく、色々なガイドラインで妊娠中も安全に使用できるとされています。中でもブデソニド(シムビコートやブデホルに含まれます)、ベクロメタゾン(キュバールに含まれます)は安全性の報告が多く第一選択とされますが、他の薬剤も同様に安全性が示されていて、薬剤変更の必要はないとされています3)。また、長時間作用性β2刺激薬(LABA)についても同様に安全とされていますので、喘息治療で最も使用されるICS+LABA製剤は、妊婦さんにとっても安全に使用できます。モンテルカストなどのロイコトリエン拮抗薬(LTRA)は、先天異常を引き起こすリスクは無いのですが、早産や低出生体重児のリスクがあるかもしれません。しかし、これはLTRA服用群に喘息の状態が悪い方が多く含まれているため、純粋な薬剤の影響ではない可能性もあります4)。
喘息発作が起こったらどうするの?
妊婦さんは気管支喘息発作を起こさないことを最優先し、吸入薬などによる喘息治療を継続することが大切ですが、万が一発作が起こってしまったらどうすれば良いのでしょう。喘息発作時に使用するメプチンなどの短時間作用性気管支拡張薬(SABA)も安全に使用可能です。重症発作時にはステロイド剤の内服、あるいは点滴を行いますが、この場合の胎児への影響は必ずしも安全とは言えません。先天異常を生じないとの報告と口蓋裂などのリスクが上がったとの報告もあります。しかし、重症喘息そのものは母体と胎児に大きなリスクを生じるため、必要時にはステロイド剤の内服、あるいは点滴を行うべきとされています3)。時々、喘息発作に慣れてしまう方がみえます。このぐらいなら大丈夫と考えず、喘息がひどくなる前に医師の診察を受けましょう。
出産後や授乳中の治療は?
出産後は母体の免疫状態が戻り、喘息の調子も変わります。赤ちゃん中心の生活になるため、お薬の服用が不規則になりがちです。お母さんの体調が悪くなれば、赤ちゃんも含めた家族全員に影響が出ます。もともとの喘息の重症度にもよりますが、出産後もしばらくは喘息治療を継続することをお勧めしています。吸入薬は母乳への移行もほとんどなく、授乳中でも安心して治療を継続して下さい。
まとめ
妊娠中に自己判断で喘息治療を中止すると、母体のみでなくお腹の赤ちゃんまで影響を受けるかもしれません。妊娠中の喘息管理では「薬を減らすこと」よりも「喘息を良い状態に保つこと」が優先されます。そのためには喘息の状態を評価し、適切な治療を行うことが大切です。些細なことでもお気軽に相談下さい。
引用文献
1) Asthma Clin Immunol 1998;81:509-517
2) Biomed Res Int 2017;8276190
3) Eur Respir J 2020;55:190208
4) Congenit Anom 2024;64:220-227
参考文献
喘息予防・管理ガイドライン2024
GINA2026