息切れについて
今回は呼吸器の症状にとって大切な「息切れ」について、お話しさせていただきます。
日本呼吸器学会のQ&Aサイトには、「息切れとは、呼吸をするのに努力を必要としたり、不快感を自覚することです」と書かれています。息苦しさ、呼吸のしづらい感じとも置き換えられます。
息切れを感じるメカニズム
息切れ、息苦しさを感知するメカニズムについては、まだしっかり解明されていません。現在の有力な説は、血液中の酸素濃度や二酸化炭素濃度、肺のふくらみ具合や胸の動き、呼吸に関わる筋肉の動き具合などの呼吸に関するセンサーからの情報が、呼吸中枢が判断したが必要量に対して足りない時に息苦しさを感じるとするものです。つまり、単純に酸素不足だけでは無いのです。
息切れを感じる疾患
私が「息切れ」の診療において大切にいているポイントは、以下の通りです。
息切れはいつからあるのでしょうか? 突然出たのでしょうか? 徐々に自覚するようになってきたのでしょうか? 息切れの程度はどれぐらいでしょうか? 息切れの程度は良くなったり、悪くなったり変動するでしょうか? 息切れはどんな時に感じるのでしょうか? 息切れ以外に咳や痰、発熱、胸が痛いなどの症状はあるでしょうか?
突然出てきた「息切れ」
以前は何も感じなかったのに、ある日突然息切れを感じるようになったら、ビックリしますね。40歳以下であれば、気胸、気管支喘息をまず考えます。ともに咳を伴うことが多く、喘息では痰やゼイゼイ・ヒューヒューという喘鳴も伴うことが多いです。気胸は胸の痛みを感じることが多いです。左胸が締め付けられるように痛い場合は、狭心症や心筋梗塞が考えられます。また、主に脚にできた血液の塊(血栓)が肺の血管を詰まらせてしまう肺塞栓症も、頻度は少ないですが危険な病気です。
徐々に悪化する「息切れ」
いつ頃からか分からないぐらいだけど、時々感じていた「息切れ」が、だんだんとひどくなってきた場合、その「息切れ」はどんな時に感じるのでしょうか? 散歩など運動をしている時に感じるのであれば、肺や心臓の病気の他に貧血などの血液疾患も考えられます。肺の病気はほとんど全て運動した際に「息切れ」を感じる可能性がありますが、エアコンや寒い日に外に出た時に感じる場合は、気管支喘息や狭心症が考えられます。運動している時は感じないけれど、何もしていない時に感じる息切れは、不安やストレスからくることもあります。
散歩など運動すると感じる息切れ
先に述べたように、ほとんどの呼吸器や循環器疾患では、じっとしている時より動いている時に息切れが強くなります。循環器疾患、つまり心臓が原因である場合には、足が浮腫んでいたり、脈が速くなったり、胸が痛くなったりすることが多いです。呼吸器疾患、つまり肺が原因ある場合では、咳や痰、ゼイゼイ・ヒューヒューといった喘鳴を伴いますが、息切れのみの場合もあります。
息切れと運動
息切れ以外の症状が軽い場合、休めば息苦しさは治まるため、次第に運動量が減っていきます。運動量、活動量が減っていくと、筋肉量も減っていきます。筋肉は多種のホルモンなどを作っており、筋肉の量が健康に大きくかかわっていることが分かってきました。じっとしていることが多い人よりも、活発に活動している人の方が長生きする、イメージ通りですね。呼吸器疾患の方も同様です。動くと息苦しいかもしれませんが、そのままだと寿命が短くなってしまいます。息切れは感じつつも、それに対処しつつ、適度に運動をしていくことが、寿命を延ばすため、元気でいられる期間を延ばすために必要なのです。
呼吸リハビリテーション
では、どんな運動をどれぐらいすればよいのでしょうか? 生活習慣病の人は、少し速足でのウォーキングを、1回できれば30分以上、1週間に5回、週150分以上とされています。しかし、息切れのある人では、状態を評価する必要があります。酸素不足を生じる場合には、不足状態が続けば心臓に負担がかかってしまいますので、どの程度の運動量で酸素不足が生じるのか知っておく必要があります。また、息苦しさが強くなった場合の対処方法も学んでおくべきでしょう。運動量・方法の設定と自分で呼吸をコントロールする方法を学び実践することをお手伝いすることが、呼吸リハビリテーションの役割になります。
まとめ
息切れは、肺や気管支以外にも、心臓や貧血、不安やストレスなどが原因でも生じます。息切れが生じる原因を見つけること、病気であればその重症度を評価し適切な治療を行うことが必要です。まずは、医師へご相談ください。
参考になるサイト
日本呼吸器学会 呼吸器Q&A
社会福祉法人 恩賜財団 済生会 息切れ・呼吸困難
https://www.saiseikai.or.jp/medical/symptom/short_breath/