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気管支喘息について

気管支喘息についてお話します。

 

エッセンス

・気管支喘息は、アレルギー反応によって空気の通り道が浮腫んで狭くなる病気です。

・長引く咳、ゼイゼイ・ヒューヒュー、息苦しさといった症状があります。

・呼吸機能検査、呼気一酸化窒素濃度測定、血液検査などで診断します。

・治療は吸入ステロイド薬と気管支拡張薬が主体です。

・発作時は短時間作用型気管支拡張薬の吸入を行います。

・風邪をひくと発作が起こりやすく、普段から吸入薬で予防することが大切です。

 

気管支喘息とは

 非常に古くから存在する病気で、とても多い呼吸器疾患(肺の病気)です。ゼイゼイ、ヒューヒューと音がする喘鳴(ぜんめい)と咳、痰、息苦しさや胸苦しさといった症状があります。子供の頃にこの病気を発症した小児喘息(しょうにぜんそく)と、大人になってからなった(成人)喘息とがありますが、この2つは基本的に同じ病気です。最近は症状が咳だけの咳喘息(せきぜんそく については長引く咳でも解説していますも増えています。これは、比較的軽症の喘息と考えられています。

 

気管支喘息の症状

 発作が起こっていない時は症状がありませんが、発作が起こると咳や痰が増えたり、ゼイゼイ、ヒューヒュー(喘鳴 ぜんめい)、胸苦しさや歩いた時などに呼吸苦を感じます。患者さんは実感されていると思いますが、これらの症状は夜間・早朝に悪化します。さらに症状が重くなると、じっとしていても息苦しさを感じるようになり、会話もつらくなってきます。次に、横になって眠れなくなり、座りこんで肩で呼吸をするようになります。もっと重くなると、意識がボーっとしてきて、最後には呼吸が止まってしまいます。喘息死(ぜんそくし)です。

 

気管支喘息の起こり方

 気管支喘息はアレルギーによって起こります。気管支(きかんし)という空気の通り道でアレルギー反応がおこり(これを炎症(えんしょう)とよびます)、空気の通り道がむくんで細くなってしまいます。また、分泌物(ぶんぴつぶつ)が増えて痰が多くなります。むくんで狭くなった気管支に、さらに痰が増えてますます狭くなってしまいます。そのために、喘鳴が聞こえるようになり、呼吸が苦しくなります。狭くなった気管支に痰がつまってしまえば窒息(ちっそく)ですね。これが、喘息死の原因です。

 喘息を治療しないまま放置したら、どうなるのでしょうか。死んでしまうほどひどい発作にならなくても、炎症が長期間続けば気管支が変形してしまい、いくら治療しても治らなくなってしまいます。これをリモデリングとよび、喘息症状が取れません。リモデリングを起こさないためにも、治療はきちんと継続しましょう。

 

気管支喘息はどうやって診断するのでしょうか

 気管支喘息は発作時に症状が出て、安定期には全く症状がないことが特徴です。また、発作は夜間、特に早朝悪くなることが多く、日中は症状が良くなります。まず、こういった症状から、気管支喘息を疑います。気管支喘息は気管支が狭くなる病気なので、呼吸機能検査(スパイロメトリー)で診断します。気管支を拡げるお薬を吸ってもらった前後で肺活量を測り、お薬によって肺活量が良くなれば気管支喘息と診断します。当院では吐いた息のアレルギーの程度を調べる呼気一酸化窒素(FeNO)濃度測定検査や、肺の抵抗を調べるモストグラフも行っています。

 しかし、咳喘息などの軽症喘息では呼吸機能検査や呼気一酸化窒素濃度が正常であることもあります。その場合は、喘息のお薬を始めてもらい、それによって症状が良くなれば喘息と考える場合もあります。

 これ以外にも、血液検査でアレルギー体質かどうかを調べます。

 

気管支喘息の治療薬は?

 気管支喘息はアレルギーが原因の病気です。アレルギーのもとがわかっていれば、それを避けることが一番重要です。しかし、ほとんどの場合でアレルギー源は、ホコリやダニ、花粉などで避けることが難しいようです。ペットが原因の場合も難しいですね。

 そこで、アレルギーを抑えるお薬を使用します。吸入ステロイド薬が最も大切なお薬で、発作がないときも定期的に使用します。これは、効果は強いけれども副作用の多いステロイドを、肺だけに届くようにしたもので、治療効果はそのままに副作用をかなり少なくしたお薬です。日本では1990年代中頃から使用されるようになり、喘息は劇的にコントロールしやすい病気になりました。

 もう一つの治療の柱は、気管支拡張薬(きかんしかくちょうやく)です。喘息は空気の通り道がむくんで細くなってしまう病気です。むくみをとるのがステロイド薬ですが、狭くなった道を強引に拡げるのが気管支拡張薬です。すぐに効くけれど、効果も早く切れる短時間作用型(たんじかんさようがた)は発作が出たときだけに使います。これに対して、長く効く長時間作用型(ちょうじかんさようがた)は吸入ステロイド薬と同じく発作予防薬ですから、発作のない時にも使います。

 喘息は2種類のお薬(吸入ステロイド薬と気管支拡張薬)をうまく組み合わせて治療しますが、これだけでは十分でない場合もあります。その場合は、アレルギーの一部を抑えるロイコトリエン拮抗薬やテオフィリン製剤を追加します。それでも駄目な時は、ステロイド薬を飲んでいただいたり、点滴したりします。

 また、ステロイドを内服あるいは点滴するような発作をたびたび起こるような難治性喘息の方には、アレルギーを引き起こす物質(IgE)や好酸球という免疫細胞の働きを抑える注射薬をお勧めすることもあります。

 

発作時の治療

 喘息発作が起こってしまった時には、短時間作動型の気管支拡張薬(メプチン、サルタノールなど)を吸入して20分様子を見て下さい。これで息苦しさが良くならない時はもう一度同じ薬を吸入して、再度20分様子を見て下さい。それでも良くならない時は、早目に医療機関を受診して下さい。
 また、ステロイド(プレドニンなど)を飲む様に指導されている場合は、指示に従って開始して下さい。一旦開始したステロイドは、症状が良くなってもあらかじめ決められた日数を服用して下さい。通常は5~7日間です。
 吸入ステロイドは、気管支喘息の一番大切なお薬ですが、発作が起こってから開始しても症状が良くなるまでに時間がかかります。更に発作時には息が吸いにくくなりますので、お薬がしっかり吸えなくなります。ですから、発作時のみ吸入ステロイド薬を使用するのは、よくありません。できるだけ発作が起こらない様に、普段の管理をしっかり行なっていきましょう。

 

発作がない時の治療は

 気管支喘息は、残念ながら現在の治療では完全には治らない病気と考えられています。中には、何年も発作が無くて、もう治ったと思われている方もいると思います。人の臓器はその機能が半分以下にならないと症状として出ないことが多いので、自分では何ともないと思っていても、呼吸機能が徐々に低下していくことがあります。また、風邪をひいたときなどに発作が再発する事が多いです。従って吸入ステロイド薬などの喘息の治療は、発作がない時でも続けていく事が大切です。高血圧や糖尿病でも、検査の数値が良くなってもお薬を続けますよね? それと同じなんです。
 また、喘息発作を引き起こす様な事は避けましょう。つまり、タバコ、深酒、過度の労働を避けて、お部屋をきれいに保ち、風邪をひかないようにして、規則正しい生活を心掛ける事が大切です。タバコは、気管支喘息発作を引き起こしやすくしますし、COPD(慢性閉塞性肺疾患)という病気も引き起こします。COPDはタバコよって肺が壊れていく病気で、最近増えている病気です。進行すると在宅酸素療法が必要になります。タバコは、必ず止めましょう。

 

妊娠したときには治療はどうするの?

 妊娠時には、誰もが余計なお薬は使いたくないでしょう。しかし、母体とおなかの子供にとって最も危険なことは、喘息発作とそれによって引き起こる酸素不足です。これが、流産・胎児の奇形に最も影響することがわかっています。ですから、妊娠したとわかったときは、吸入ステロイド薬をやめないで下さい。吸入ステロイドは胎児の発育にほとんど悪影響を与えないことが分かっていますので安心して下さい。もしご自分が使用しているお薬が不安なときは、薬を止めずに主治医へ相談して下さい。

 

怖い喘息死

 最後に喘息死のお話をします。現在でも日本では1年間に約1500人の人が喘息のために亡くなっています吸入ステロイド薬が使用される前は年間6000人でしたから、喘息死は確かに減っています。それでも、未だに喘息死は存在します。

 喘息死は、空気の通り道が急に狭くなって詰まることによる窒息死です。ほとんどの場合は、頻回に起こる発作を短時間作用型気管支拡張薬を使用するだけで対処している場合に起こります。喘息はアレルギー・炎症が原因ですが、吸入ステロイド薬を使用していないと原因が良くならないわけですから、いつか大きな発作が起こります。短時間作用型気管支拡張薬のみを1日に何回も使用することは、喘息死を引き起こす可能性が高く危険です。1日に4回以上気管支拡張薬を使用する場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

 

まとめ

 気管支喘息は以前と違いコントロールできる病気になっています。喘息と診断されても、きちんと治療していれば、健康な人と同じようにスポーツもできることがほとんどです。しかし、甘く見ると怖い病気でもあります。将来の自分のためにも、医師と相談しながら治療をすすめていきましょう。