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花粉症の鼻水、くしゃみがつらかった方に舌下免疫療法をお勧めします

つらかった花粉症のシーズン、もう少しで終わりますね。この記事では鼻水、くしゃみ、目の痒みなどの症状がつらかった方へ、舌下免疫療法をご紹介します。

舌下免疫療法とは

・他の薬物療法と異なり過剰なアレルギー反応を抑える治療です。

・スギ花粉症とダニアレルギーによる症状のみに行います。

・アレルギー症状のない時期にも毎日行う治療です。

・治療期間は3年以上、できれば4年をお勧めしています。

・副作用として、口腔内の腫れ、痒み、鼻炎症状の一時的な悪化が報告されています。

舌下免疫療法で花粉症が軽減できる仕組みについて

アレルギー性鼻炎は、アレルゲン(抗原)と呼ばれる原因物質(ダニ、スギ花粉など)に過剰に反応することによって引き起こされます。そこで、免疫療法はアレルギーの原因となっているアレルゲンを、毎日繰り返し体内へ投与することによって体をアレルゲンに慣らし、過剰な免疫反応を抑える治療法です。そのため、アレルギー反応が始まった後の段階をブロックする通常のお薬と異なり、根本的な体質改善(長期寛解・治癒)も期待することができます。また、免疫療法には経皮免疫療法と舌下免疫療法があります。経皮免疫療法はアレルゲンを皮下注射する方法で、舌下免疫療法はアレルゲンを舌の下にふくむ方法です。経皮免疫療法は頻回に通院する必要がありますが、舌下免疫療法はご自宅で行えるため簡便です。舌下免疫療法はスギ花粉症およびダニアレルギー性鼻炎に対して行われています。

舌下免疫療法はどれぐらいの効果が期待できるのか

一般的に舌下免疫療法を含むアレルゲン免疫療法では、アレルギー性鼻炎を患っている方のうち8割前後の方で有効性が認められています。スギ花粉症に対する舌下免疫療法に関する海外の研究では、3年間治療を続けた場合でその後4年間、4年間治療を続けた場合はその後6年間治療効果が持続したと報告されています。また、ダニアレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法においては、気管支喘息の発症予防も報告されています。種々の報告からその有効性・安全性が確認されています。飲み薬や点鼻薬、点眼薬はあくまで一時的に症状を抑えるもので、根本的な治療ではありません。根本的な体質改善(長期寛解・治癒)を望む方には、積極的にお勧めしています。

舌下免疫療法の安全性について

舌下免疫療法の副作用としては投与部位である口腔内の腫れ、痒みなどが最も多くみられます。特に投与後少なくとも30分間、投与初期のおよそ1ヶ月間などは注意が必要です。これらの副作用は、通常投与後数時間で自然に回復することが多いのですが、症状が長時間持続する場合は医師に相談して下さい。また、アナフィラキシーなど重篤な症状が起こる可能性もあります。アナフィラキシーと考えられる症状が発現した際は、直ちに医療機関を受診するなど迅速な対応が必要です。

舌下免疫療法の流れ

舌下免疫療法の具体的な流れを説明します。まず、問診と血液検査で患者様のアレルギーの原因(アレルゲン)を確かめます。舌下免疫療法はスギとダニのみが対象となり、それ以外のアレルゲンには対応しておりません。重い気管支喘息や口腔内に傷や炎症がある方、他の疾患で治療を受けている方、妊婦・授乳婦の方などでは、舌下免疫療法による治療を受けられないことがあります。治療は1日1回舌下にタブレット型の薬剤を含み、1分間舌下に保持した後飲み込みます。その後5分間はうがいや飲食を控えます。また、投与前後2時間は入浴や飲酒・激しい運動を控えます。投与する薬剤は1週間後に増量します。副作用に対する対応を考慮し、当院では初回はクリニック内で行い、30分間クリニック内で様子を見させて頂きます。翌日(2日目)からは、ご自宅で服用して頂きます。治療期間は3~5年間をお勧めしています。また、投与を長期中断した後、再開する場合には、医師に相談する必要があります。なお、当クリニックへの通院が難しい場合や治療途中での転居の必要性が生じた場合は、近くのアレルギー専門医療機関を紹介のうえ治療を続けることも可能です。

まとめ

本記事では舌下免疫療法について解説しました。本治療によって過剰な免疫反応が軽減し、お薬を減らす効果が期待できます。そのため、スギ、ダニによる鼻水、くしゃみ、涙、目の痒みがつらかった方は、是非本治療をご検討下さい。

 

参考文献

アレルゲン免疫療法の手引き(日本アレルギー学会 2021年)

J. Allergy Clin Immunol 2010;126:969-75

 

しらき内科クリニック

院長 白木 晶