一宮市・稲沢市の内科・呼吸器内科・アレルギー科はしらき内科クリニック「コラム」ページです。

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長引く咳について

咳は病院を受診する人の中で最も多い症状だともいわれています。総合病院の呼吸器内科専門医が、咳が続く期間が長いから他の病気も調べようかなと思うのは、1ヵ月以上続く場合だと思います。診療所・クリニックでは2週間以上続く場合か、あるいは痰などの他の症状もある場合でしょう。

 

問診の際に知りたいこと

お話を伺う際には、以下のことを確認しています。

・咳はいつから出ているのでしょうか?

・咳が多く出るのはいつでしょうか? 日中でしょうか、夜でしょうか?

・発熱やのどの痛みの有無(いつ頃あったのか)

・痰の有無と色(実際に外に出るのかどうか)

・鼻水の有無と色

・喘鳴(喉元でゼイゼイ、ヒューヒューと音がすること)の有無

・息切れの有無

・胸やけや、起床時の口の苦み

・花粉症、アトピー性皮膚炎など、アレルギー疾患の既往

・喫煙歴、ペットの有無

 

長引く咳の原因

長引く咳の原因の多くは、風邪を引いた後の咳です。これを感冒後咳嗽といいます。長引く方は2ヵ月も続くことがあります。当初は痰もあることが多いですが、次第に良くなっていきます。

次に多いのが、咳喘息(せきぜんそく)で、こちらはアレルギーによる咳です。基本的には気管支喘息と同じで、症状が咳だけのものを指します。(気管支喘息の解説も参考になさって下さい)。風邪を契機に症状が出やすいので、最初は風邪だったのに、途中から咳喘息に切り替わっていることもあります。基本的には痰の少ない咳で、夜間に多く出ます。

この2つの病気以外は頻度が少なくなります。副鼻腔炎(蓄膿症)のある方では咳が多くなります(副鼻腔気管支症候群)。この場合は、黄色痰が多くみられます。

胃酸の逆流(逆流性食道炎)から起こる咳も知られています。欧米では多いようですが、日本ではそれ程多い印象はありません。胸やけがする、起床時に口の中が苦いといった症状があれば、逆流性食道炎の存在を疑います。胃酸分泌を抑える薬で治療します。

喉のイガイガ感から咳払いをする喉頭異常感症も比較的多くいらっしゃいます。

ちょっとした刺激で咳が出てしまう咳過敏性症候群、お薬による咳もあります。

発作性に激しい咳が出る場合は、成人でも百日咳と診断されることがあります。

この他に、やっぱり見落としてはいけないのが、肺癌、結核とその類縁疾患である非結核性抗酸菌症、間質性肺疾患でしょう。頻度は少ないのですが、ともに怖い病気ですから、この2つはいつも頭の中に入れて診療にあたっています。

 

長引く咳で行う検査

・胸部レントゲン写真:見落としては怖い肺癌、肺結核、間質性肺炎は、胸部レントゲン写真である程度見つけることができます。

・呼吸機能検査:気管支喘息であれば1秒間に吐く息の量(1秒量)が少なくなります。また気管支拡張薬を吸入した後に、1秒量が改善することが気管支喘息の特徴です。

・呼吸抵抗測定(モストグラフ):呼吸機能検査では調べられなかった、気管支の奥の方(末梢気道)の状態を知ることができます。咳喘息では、呼吸機能検査は正常でも、モストグラフで異常を示すことが多いです。

 

・呼気一酸化窒素検査(FeNO):息を10秒間吐いて頂き、その中のアレルギーの度合いを調べることができます。この数値が高いと気管支にアレルギー反応が生じていることを示し、咳喘息の可能性が高くなります。

・採血検査:アレルギーの指標となるIgEを測定します。IgEの総量と、各アレルゲンの個別反応を調べます。アレルギーのある方は、咳喘息の可能性が高くなります。成人百日咳の診断は難しいのですが、血液検査で判明することもあります。

 

長引く咳の治療

治療は原疾患に応じて行います。

・感冒性咳嗽:鎮咳薬などの対症療法を行います。

・咳喘息:吸入ステロイド+気管支拡張薬の配合吸入薬で治療します。一度治まっても再燃することもありますので、継続治療をお勧めしています。

・後鼻漏、副鼻腔気管支症候群:マクロライド系抗菌薬と去痰薬で治療します。

・胃酸逆流による咳嗽:胃酸分泌を抑えるお薬で治療します。咳の改善には、少し時間がかかることもあります。

・喉頭アレルギー:抗ヒスタミン薬が良く効く喉頭アレルギーの方もいらっしゃいますが、お薬の効かない方もみえます。喉に痰がからんでいる感覚がありますが、実際には痰は無く知覚神経の過敏症状であることが多いのです。咳払いが刺激になって余計に喉が荒れてしまうので、意識しないようにお話ししていますが、なかなか取りづらい症状です。

 

まとめ

長引く咳には、感冒後咳嗽、咳喘息が多いです。感冒後咳嗽は鎮咳剤、咳喘息には吸入ステロイド薬で治療します。他にも、肺癌、肺結核、間質性肺疾患など、最初に鑑別しておくべき重要な病気もあります。漫然とお薬を使用するのではなく、できるだけ検査を行い、根拠をもって治療に当たりたいと考えています。